演劇の音響・PAについて。ミキサーの基礎知識、Ableton Live&APC miniで理想のポン出し
今、なんかすごく自分の中で「音響」についての興味が尽きなくてですね。
というのが、自分みたいな零細演出家だとプロの音響さんはおろか演出助手さえ付かない事もままあるので、そうなるとどうしても音響のプランから稽古・本番のオペも全部自分がやらなきゃいけなかったりします。
で、これがやってみたら物凄い面白いんですよ。
いやもちろん、素人の自分一人で何とかなる(もちろん色んな方の手を借りながらですが)ぐらいの小さな現場での話ではあるんですけども。
でも、この決して失敗が許されぬ緊張感と、事前に色々とコツコツ準備して、本番でその努力が実るあの感覚というのは、音響にかぎらず舞台作品作りに関わる全てのセクションで共通のものなんだろうなと思うんですよね。
事実、自分が音響のオペやってる時と役者やってる時の心境はそんなに変わらないですもん。
あとはもともと自分も朗読の畑から出てきた役者なので、声や音には一方ならぬ関心を持っていて、それもあって音響というジャンルとも波長が合うのかなと。
それとこれまた音響に限ったことじゃないんですが、機材自体が好きってのもあると思います。
個人的な話をしますと、今すっごいミキサーが欲しくてですね。笑
それもリモートで繋げられるデジタルミキサーね。
具体的な機種名まで挙げると、まず第一候補が「サウンドクラフト Ui12」。
これはもうね、舞台の稽古〜小規模な本番まで、もうこれ以上ないぐらいの便利機材なんじゃないかと思うんですよ。
接続はWifiでも有線LANでもいけて、かつアプリを入れる必要もなくてブラウザ上で操作可能。(これ結構重要なポイント)
出力端子の数も種類も多いんでだいたいのスピーカーには繋げられます。
あとはこれ、USBメモリに入った音楽ファイルを再生することは当然として録音まで出来ちゃうという。
このちっこい機械にパワードスピーカー繋げて舞台の端にポンと置いとけば、それで設営が完了しちゃうんですもんね。
あとは演出席のタブレットかノートPCから全部の機能が操作可能。
なのでいちいち長いケーブルを毎回の稽古に持ってこなくて済みます。
あとはもうちょい安いやつだとベリのX Air XR12とか。
これは無線の接続が不安定ってレビューをよく見るので、特に本番での運用は有線LANでやったほうがよさそうですね。
音響の奥深さと、情報の少なさ
それでまあ、そんな感じで今も色んな本を読んだり調べたりして勉強中なんですが、そんな中で強く感じているのが、そもそもの「流通している情報の少なさ」です。
いやもうホント、めちゃめちゃ情報が少ない。
これだけ歴史のある職業で、かつ超専門的な仕事でもあるんだから、もっともっと情報が溢れてても良さそうなものですが、書籍一つとっても種類も数も全然少ないと思います。
たとえばもっとも重要な「ミキサー」という機材にしても、これを専門に解説した本は皆無なんですよね。(自分が調べた範囲で)
基本的な使い方も複雑な上、実際の運用は更にもっと奥が深い機材なんだから、ミキサーの専門書ぐらいあっても良さそうなもんなんですけどねー。
いや普通にこんな複雑な機械、何の知識も解説書もなしに触れって言われてもそんなもん絶対無理じゃないですか?笑
おまけに繋ぎ方を間違えたらそれだけで楽器や機材が壊れる・・・などという恐ろしいリスクもあるってんだから、そりゃーそんなもん、興味を持つ以前の話としてビビって触ろうと言う気も起きませんよね、当然。
私にしたって、数撃ちゃ当たる的に音響関係の色んな本を読み漁ったり、もしくはもういっそ機材買っちまって実際にイジった方が早えーよなってことで適当なミキサーを買ってみたりして、それでやっと「基礎的な使い方」がわかってきたレベルですからね。
ちなみにイッチバン参考になった本がこれ。
この本を読んでなかったら、たぶん今もミキサーの使い方は分かってなかったと思います。
音響に興味がある演劇人で、本を選ぶなら絶対にこれ一択です。そのぐらいわかりやすい。
音響卓の横でも見れるように、私はKindle版を買ったんですけど。
いやほんと、これ一冊あれば現場に出られる・・・ってのは大げさにしても、少なくとも舞台の仕込みで音響さんの手伝いをする際に困らないぐらいの知識はじゅうぶんつきます。
ミキサーについて
さっきもミキサーの話をしましたが、やっぱ素人にとってミキサーの使い方ってのは一つの鬼門だと思うんですよ。
機能もさることながら、まずそもそも「なんでミキサーが必要なのか?」すら普通は分かんないと思う。いや私も普通に「ミキサー??CDデッキじゃダメなの?」とかアホ丸出しの事を思ってましたからね。笑
まあそれに関しては仕方のない面もあって、特に演劇の場合だと楽器はおろかマイクを使わなかったりもしますから、あんだけのチャンネル数が必要な意味がまず理解し難いんですよね。
流す音としてはだいたいBGMと効果音ぐらいですから。
ミキサーってのはその言葉のまんま「混ぜる」ための道具で、何を混ぜるかって言うとまあもちろん「音」なんですけどね。
その王道的(って言い方もおかしいんですけど)な使い方としては、コンサートやなんかで「楽器」と「マイク」、あとは「再生機器」の音を混ぜて、ステレオにしてスピーカーに送るってのがミキサーの主たる機能です。
マイクもボーカル、ドラム、ギター用にそれぞれ必要ですし、ベースやキーボードは当然また別のチャンネルを使いますから、「32ch」ぐらいのチャンネル数が必要ってのも何となく分かるかと思います。
だからバンドマンとかは比較的ミキサーに対しての理解も早いでしょうし、何よりもそれらの「音響機器」を必要不可欠な道具として自分自身で扱うわけですから、必然的にその興味も湧きますよね。
そこへきて我々演劇人というのは先述の通り、基本的には楽器も使いませんし、声も基本はマイクを通さない「ナマ」の声です。
もちろん、だからといって音響と無関係というわけでは決して無いのですが、プレイヤーとして直接関わる機会が少ないってのは事実です。
まあ確かに、さっきも言ったように流す音はBGMと効果音ぐらい、とくれば「ミキサーって、要る?」という考え方になるのも仕方ないのかもしれません。
それでもミキサーの基本的な使い方ぐらいは知っておいて絶対に損はしないですけどね。
パソコンで音出し
でまあ実際、特に稽古ではわざわざミキサーを持ち込んだりせずに、もうパソコンから音出しをしてそれで済ませちゃってる所も非常に多いです。
私も「Ableton Live」と「APC mini」のこんな組み合わせをよく使います。
もちろんこのままではスピーカーから音が出せないので、オーディオインターフェイスかその機能のついたミキサーが必要になるんですけど。
APC miniは演劇には超おすすめ
しかしながらこのAbletonとAPC miniの組み合わせは演劇の音響装置としては相当にイケてまして、こいつ見ての通りボタンがめっちゃ並んでますけども、このボタン全部にそれぞれ別の音源を割り当てることが出来ます。ちなみに64個あります。
もうこれだけでも良さが分かっていただけるかと思うんですが、実はコイツの真価は
・8本のフェーダーでそれぞれのチャンネルの音量操作
が可能である、という点にあるんですね。
よーするに縦の8ボタン分が「1チャンネル」として、
- BGM
- BGM2
- 効果音(風)
- 効果音(爆発)
- 効果音(群衆)
- 効果音(打撃音)
とかを割り当てておけば、
・風が吹く中、爆発音が鳴り、群衆がざわめき、爆発音がフェードアウト、と同時にBGMがフェードイン
みたいな事が超簡単に出来ちゃうんですよ。
音源の割当も、Ableton上でドラッグ・アンド・ドロップでOKですしね。
もしこれがなきゃ、CD(またはMD、SD)プレーヤーを2台、あとはサンプラーを別途用意してそれぞれの機械をガチャガチャ操作しなきゃならないわけですから、そう考えるとこれがいかに革命的に便利な機材かが良く分かるかと思います。
サンプラーには基本フェーダーは無いので、フェードインはミキサー側で操作しなきゃいけませんしね。
演劇では特にこういう、音が重なるシーンというのが多いので、なおのこと重宝する機材かと思います。